大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和27年(う)627号 判決

原審が適法に取調べた証拠について検察官所論の点を審究すると被告人は昭和二六年九月頃有友静子(当時二六年)を広島県安芸郡音戸町字田中特殊飲食店沖野ツタノ方に売笑婦として紹介し同家に住込ませたことが明かである、而して原審は被告人は有友静子の境遇に同情し好意的に沖野ツタノとの雇傭契約成立に単に口添した程度に止まり職業安定法に所謂職業紹介したものとは認められない又仮に被告人の行為が同法の職業紹介に該るとしても沖野ツタノ方の特殊飲食店は認許された適法の営業で客の集会、娯楽、飲食等の為場所又は設備等を提供するものであり売淫行為を目的とするものでなく従つてその営業に従事する接客婦も亦正当の業務であるから仮令有友静子に於て接客の機会を利用し売淫行為があつたとしてもそれはその者等の任意の意思に基いて行はれる適法行為であるから雇傭契約の趣意とは判然区別しなければならない、従つて被告人の紹介行為は職業安定法第六三条第二号に所謂公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介を行つたものに該当すると云ふことはできないとして被告人に無罪の言渡を為しているがしかし記録に依つて窺はれるところでは検察官所論の通り被告人が有友静子を沖野ツタノ方に伴つたのは右静子をツタノ方の接客婦として住込ませる為その就労の紹介斡旋をしたものと云うべくその紹介手数料こそ貰つていないが単なる口添とは認められない従つて被告人の行為は職業安定法の所謂職業紹介を為したものと認めるのが相当でありこの点の原審の認定は事実に副はないものと云はなければならない。更に沖野ツタノ方の特殊飲食店は認許された適法な営業でありその営業に従事する接客婦も亦正当な業務であるから公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせたものとは云へないとの原審の認定は検察官所論の通り本件各証拠に依つて窺はれる沖野ツタノ方の特殊飲食店の実体に殊更目をおおわんとするものであつて同家の飲食店営業そのものは営業の認可を受けたものとしてもその営業施設内に於てその雇傭する接客婦に売淫せしめて居り売淫行為が本件雇傭契約の内容となつていることは原審の適法に取調べた証拠からもこれを窺はれ仮令有友静子に於て合意の上とは云へか様な飲食店への紹介行為が職業安定法第六三条第二号の公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介を行つたものに該当することは言を俟たないところと云はなければならない。

然らば原審の前敍認定は事実に副はないものでその認定を誤つた違法がありこの違法は当然判決に影響すると思はれるから原判決は結局破棄を免れない。検察官の論旨は理由がある。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!